自然の楽器、岩笛
「心魂を揺るがすような
神々しい響きを持っている。
清澄そのものかと思うと
その底に玉のような
温かい不透明な澱みがある。」
(三島由紀夫) |
■取材で出会った岩笛に魅せられ、とうとう岩笛奏者に!
2005年1月21日、故中央大学名誉教授、中西旭氏※がお亡くなりになり、御霊送りの会に出席させていただいたのをご縁に、古神道の秘儀、岩笛に出会いました。それから、岩笛を吹奏するようになり、相性がよかったのか、不思議といい音が出るようになりました。自分ではなく岩笛が吹いてくれているようです。人前でも吹かせていただくようになりました。
今まであまり知られることのなかった岩笛の魅力をご紹介いたします。
■岩笛は、もっとも古い楽器
岩笛は、縄文時代から吹かれていました。もっとも古い楽器のひとつといえるでしょう。縄文人は、もともと孔の開いている岩を拾ってきて使ったり、固い岩に孔を開けて音を出していたといわれています。
形状は様々で、孔が貫通いているもの、いないもの、また、一つだけ孔があいているもの、複数の孔があいているものがあります。複数の孔は指で音程を変えることを目的に開けられていると考えられます。一つだけしか孔が開いてなくても、工夫するとオクターブ以上の音が出るのが、岩笛のひとつの魅力です。
■岩笛の利用法
縄文の人たちがなぜ岩笛を吹いたのかという理由ははっきりしていません。合図ために使った、音を出すこと自体が目的だった、神を呼ぶために吹いたというような説があります。
神を呼ぶためという目的では、限られた神社などで御神事で神を呼ぶときに現在でも岩笛が吹かれています。また、アトランタオリンピックの日本代表シンクロナイズド・スイミングチームの演舞曲NIPPONでは、最初に岩笛が吹奏されました。岩笛は、女神を呼ぶために吹奏しますという風に紹介されていました。
■三島由紀夫が語った岩笛の音
岩笛の特徴はその音色にあります。その音を聞いたとき、多くの人々は神秘的な魅力に取りつかれます。
三島由紀夫は岩笛の音を次のように語ったといわれています。
「心魂を揺るがすような
神々しい響きを持っている。
清澄そのものかと思うと
その底に玉のような
温かい不透明な澱みがある。」
岩笛のような音色を出す楽器がもうひとつだけ確認されています。日本の伝統芸能、能で吹かれている能管という楽器です。能管は、岩笛を真似て作られた楽器ということですが、音色も去ることながら、その目的もあの世、死後の世界の霊を呼び出す意味あいがあるといわれ、岩笛とそっくりです。能には、神、霊などのあの世からのキャストがたくさん出てきます。
岩笛と能管の音色がよく似ているのは音響の特徴が実際によく似ているからです。音の物理的な属性として、音の強さと周波数があげられますが、岩笛も能管も他の楽器では出せない高周波が出ています。周波数が高いと言ったときは、音が高いということになるのですが、その高周波は普通の音の強さだと人間の聴覚では聞き取れないほど高いものです。じつは、その高周波こそ、非常に大事な意味を持っています。
■岩笛の出す高周波音の脳への影響
岩笛も能管も、他の楽器では、出せない2万2500ヘルツの高周波が出ています。人間の聴覚では聞こえない超音波です。
そのような高い周波数は、人間の脳にどのように働きかけているのでしょうか。
高周波成分を除外した音楽と、高周波を除外しない音楽を人間が聴いたとき、高周波が出ていない音楽よりも高周波を含んだ音楽のほうが、かなり多くのアルファが出ているという実験結果があります。
実際に岩笛を吹いてみると分かるのですが、その響きは、想像以上の現象を起こします。部屋全体が岩笛によって共鳴し振動したり、脳に心地よい刺激をもたらします。
楽器を吹くことによって、脳に影響を与えるという概念はあまりなかったのですが、岩笛を通して、ひとつの可能性を感じています。
※ 中西旭氏は、神道に造詣が深く、「神道の理論」(たちばな出版)を書かれています。また、商学博士である中西氏は、日本の会計学の分野において歴史的な人物です。日本創造経営協会などで顧問を勤められていました。
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